私がまだ幼かったころ近所に竹薮があった。
竹薮は子供にとってかっこうの遊び場であると同時におどろおどろしい恐怖すべき場所でもあった。
昼間は遊びまわるそこも夕暮れからはなにか潜んでいそうな近寄りがたい場所にへんぼうする。
その竹薮は小さな山の斜面にあった。
竹薮の上にそれはあった。
黒い小さな家。
竹が生い茂り他に民家などもないそこになぜ立っているのかわからない黒い家。
まったく窓などもないその家へなぜ黒いのかもわからないほどだった。
幼かった私には夜の竹薮よりも昼間見るその黒い家が恐ろしくてしょうがなかった。
誰かかが除いている気がするのだ。
まどの一つもないその家から除くとすれば壁の隙間。
しかしその家にはもちろん隙間などない。
それはイマジネーションの世界だったのかもしれない。
目には見えない板と板の隙間からのぞく女性。
老いている様でもありただ痩せている様でもあった。
ただその眼光が異様であり凄まじく強いと感じていた。
そんな幼年期の話をなぜ今思い出したかと言うと最近になって解ったことがあるからだ。
その黒い家は竹薮近くの寺が無縁仏などを放置同然で押し込めていた建物だったらしいのだ。
なにか土地に障りが出るのではと当時の大人達は密かに囁きあっていたらしい。
親戚からひょんなことから最近その話しを聞かされた。
そして自分の中で感じていたものが不意に蘇った。
今は竹薮もなくなり黒い家は住宅になったが時々あの妖気にも似た視線を思い出すときがある。